ファイト・クラブ、或いは私が訪れない愚かな地獄

TwitterのTLにときどきファイト・クラブを読む蟹の画像が流れてくる(なんで?)ので、ようやくパラニュークの『ファイト・クラブ』を読んだ。 ファイト・クラブ規則第一条 ファイト・クラブについて口にしてはならない ファイト・クラブ規則第二条 ファイト・…

共通思考とは何なのか?

「作られた目的はなんですか?」 「ハギリ博士にお答えしました。人類の共通思考の構築です。(中略)」 「共通思考とは、どんなものですか?」 「人類の理智の多くが参加することで形成される思考形態のことです。そのためにネットワークを構築してきました…

2022年上半期ベスト+α(小説編)

体調と怠惰が理由で1年ほど消失していた摂取(月)記録をなんかもうオミュッとしてムイッとしてこうなりました。 小説…Best5 チベット幻想奇譚/アンソロジー 沈みかけの船より愛を込めて/アンソロジー プロジェクト・ヘイルメアリー 上・下/アンディ・ウィ…

貨幣経済アレルギーとゼンゼンゼンジャナイ

3年かかってやっと積立NISAを登録した。 この3年の内訳は、重い腰を上げるのに2年11ヶ月、調べてやる気を出すのに3週間、諸手続きに1週間である。まぁ概ねメンドクセェとの戦いであった。 かの戦いではこの本にお世話になった。マジで基本情報しか載っていな…

ここ数年で買って良かったもの

こういうのやったことなかったけど「Twitterでフォローしていたり、ブログを購読している人のこういう記事」はかなり好きだ。じゃあ自分もやりなさいよ。ハイ…。 オススメ記事とかランキングではなく、「こういうものが好き」みたいなのが見えるくらいの他人…

ブンガク、ブンガクね

『ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短編29』を読んだ。日本文学における良質な短編をテーマ毎にいくつか編み英訳して出版されたものの、原著(というか日本語の)編み直し版である。 ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短篇29 新潮社 Amazon 【目次】 ・序…

スリーフレーズ、フリーフレーム

今まで読んできた本の中でもずっと忘れられないフレーズというのが3つある。思考の空隙に泡のように浮き上がってきて、そしていつもその言葉の意味を考え続けてきた。 「混沌とした話をしているね。もっと抽象的に言いなさい」 「ようするに、つながっている…

ダメダメのちょむちょむになっていた

2021年の後半はフィジカルがダメダメになっており、殆ど何も出来なかった。殆どには日常生活も含まれていて、本を読んだりアニメを見たりはおろか、何なら食事もろくに出来ず仕事すら出来て無かった。元は完全にフィジカルだけのダメージだったのだが、疲労…

乙女ゲームの甘い沼でヌルルンヌルウン(2回目)

これまでのおはなし レーティング17と18の間にある文学という美しい壁 貴方と世界を知っていく Happyの生まれ出る闇 少女という器が受け止めるもの これまでのおはなし 乙女ゲームの甘い沼でヌルンルルしていた - 千年先の我が庭を見よ 前回『ニル・アドミラ…

2021年過ぎ去った春のこと(後編)

オッ偉いなちゃんと後編が出てきた。想像以上にボリュームがある後編になっちゃっただわよ。 小説編(続き) ルート350/古川日出男 きらめく共和国/アンドレス・バルバ 君たちは絶滅危惧種なのか?/森博嗣 アステリズムに花束を ポストコロナのSF 三体Ⅲ 死神…

2021年過ぎ去った春のこと(前編)

色々読んでたんだけども全く何も書く気がなくなって放置してた。何をしてたかって?Switchで遊んでいました。 P5Sクリアレビュー 愛の果てにあるべきものは永遠 - 千年先の我が庭を見よ とは言え溜まりすぎたし、これは読書記録代わりでもあるのでまとめて出…

オススメマンガ情報

身も蓋もないタイトルだ。 久しぶりに友人がオススメしていたマンガを読んで面白かったので、たまには私も出すかとなった。あんまり過去の名作みたいなものは出さずに、ここ数年での感性で(そして出来れば連載中で)ピックアップしよう。 単行本買ってるやつ …

P5Sクリアレビュー 愛の果てにあるべきものは永遠

ペルソナ5スクランブル!やったぜ! ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ - Switch 発売日: 2020/02/20 メディア: Video Game ペルソナ5が楽しすぎたので、続編と聞いてウキウキしながら買ってきた。(Switchごと買ってきた)RPGからアク…

2021年冬のこと

あれよあれよという間に冬が終わった。 春?春もいつ来たのか分からない。とにかく各種パン祭りが開催されたことだけは察知していて、白い皿に必要な点数はもう集まった。白い皿がもらえたら、それはもう冬の終わりだ。冬は明後日くらいに終わります。 小説 …

ハルサメカラメル/Saccharine rain

止められない喪失の予感 もういっぱいあるけど もう一つ増やしましょう*1 自分の人生というものを、坂道を転がる車輪のように、ただ倒れないようにだけ集中しながら扱ってきて、自分で金を稼ぐようになると突然道が平坦になった。 どういう風に生きようかと…

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』感想 

見てきた。 ネタバレありでの...というか何を言ってもネタバレになるという凄い状況なので、感想は全てネタバレですね。感想を書きます。 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』本予告・改2【公式】 TVシリーズを全部見ていたわけではないけど、漫画は確か全部…

ペルソナ5 クリアレビュー 現実への帰還に残るもの

ペルソナ5 - PS3 発売日: 2016/09/15 メディア: Video Game ペルソナ5をクリアした。めちゃくちゃ良いゲームだった。 easyの難易度で90時間。確かにかなりのボリュームだったが、それだけの時間がまた幸福に満ちていたのも事実だ。プレイ中も楽しかったが、…

「ここはそういう場所なんだよ」

ここは、教室だ。 中学…2年の頃の。私のクラスの人数は奇数で、どうしても部屋の右後ろの奥だけは一人席だった。席替えではハズレのような扱いの席だったが、先生の目からも遠く、それでいて中庭から流れ込む風は心地良く、隣に気を使うこともないその自由気…

ペルソナ5---世界への没入感がもたらす幸福と地獄

ペルソナ5 - PS4 発売日: 2016/09/15 メディア: Video Game ペルソナ5を始めた。 世間ではP5Rが出ているが、今更ながらペルソナ5(PS3)をプレイしている。我が家にPS4はありません。 今はもう5人目のパレスでオタカラを盗んだところだ。これからどうなるんだ…

モリモリご飯新党と脳裏に焼き付かない焼きあごだし、そしてゼリーに求めるちょうどいい全て

炊飯器を買い替えたのでご飯をモリモリ食べている。 思えばここ10年くらい、取り敢えずみたいな経由で入手した思い入れゼロの炊飯器しか使っていなかった。やがて釜のコーティングは所々剥げ、おこげモードでもないのに炊きムラが出て、何か米が美味しくない…

「フィクサーに挑まないか?」

タイガーマスクのような覆面を被った男がそう問いかけてきた。 口調こそ問いかけているものの、私には断るなんて選択肢は用意されていないのが分かる。そう、私はフィクサーに挑まねばならない。 夢の中は認識の世界だ。 私が「これは空を飛ぶんだ」と思えば…

2020年秋のこと(ノンフィクション・ゲーム編)

気付けば(略)小説編を書ききったので、ノンフィクション&ゲーム編も頑張って書ききった。偉いな~! ノンフィクション 黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏/春日孝之 能はこんなに面白い! 図説 天皇家のしきたり案内: 知られざる宮中行事と伝統文…

2020年秋のこと(小説編)

よく考えたら月記録を3ヶ月くらいしかやっていない。 読んだものを書いておく。量が多くなったので小説とノンフィクションを分ける。(これをするとノンフィクションをやらなくなる)(そういう未来が見える) あとゲームのことも…いずれ。 最近はSFに偏っていた…

効果的な降下中のエレベータ、現れない幽霊、そして盃に注がれた情報

降下中のエレベータの中でしか出来ないような話がある。 プロポーズは夜景の見える素敵なレストランで、という王道のイメージ。その話をするのに相応しい状況だとか空間ってものがあるような気がしている。 雰囲気に呑まれるというより、雰囲気に呑ませてい…

乙女ゲームの甘い沼でヌルンルルしていた

乙女ゲームをやってた。 なーんにもしたくなーい!ずっとこの甘い沼でヌルンルルしってたーい!といことで10月の月記録は消滅した。仕方ないね。今日は乙女ゲームの話をします。 とはいえ初めて乙女ゲームをやって、突然その花園に酔わされたわけではない。 …

2020年9月のこと

街の夕方からツナマヨの匂いが消えた。 夏が去る。近くの巨大な西友が潰れ、新しいスギ薬局は出来続けて、どこそこにイオンモールが出来たという話が耳に寄せられる。秋が来た。寂寞に惑わされることもなく、私たちは本州を逸れ続ける台風の行方を見守ってい…

世界の終わり

夢で世界の終わりを見てきました。 空が明るい桃紫色の雲に覆われ雷光がそこかしこで煌めく中で、地表はプロミネンスのようなマグマが踊り出して全てが覆われて、終わります。どこか遠い宇宙で冗談みたいなフォルムの宇宙人達がそれをモニタで見ていて、やが…

2020年8月のこと

八月は忘却の季節だ。 鮮明な空の青さと絡みつく熱気は未だ鮮明に残る。 膨大な時間である一方で均一化された日常はとっくの昔に時系列を失い、40日ばかりの空隙はどこにもいけないまま空の青さと熱気を携えて今もそこに残っている。 もう会わない誰かを思い…

ホラーに求めるもの、求めないもの

ホラーによって人が理不尽な不幸に遭うのが好きではない。 それは感じている恐怖の根源が「自分の穏やかな日常が理不尽に崩される」ことだからだ。何の因果もない人間が場に残った怨念によって殺される様は、無差別殺人や快楽殺人によって突如奪われる命を見…

2020年7月のこと

「愚将は橋を落とし、賢将は川に落とす」という故事成語がある。(ない)橋を渡り敵軍から逃げる時に、愚かな将軍は橋を落とすことだけを考えるが、賢い将軍は敵軍を川に落とす方法を考える、という意味だ。(ない)つまり、目的と手段のどちらかに視点を置…