よく考えたら月記録を3ヶ月くらいしかやっていない。
読んだものを書いておく。量が多くなったので小説とノンフィクションを分ける。(これをするとノンフィクションをやらなくなる)(そういう未来が見える)
あとゲームのことも…いずれ。
最近はSFに偏っていたので意識的にSF外を読んでいたら、SAN値の高いラインナップとなってしまった。
フィクション
ヴェールドマン仮説/西尾維新
代理ミュンヒハウゼン症候群なんて言葉が出てくる魅力はやっぱり必要。西尾維新は西尾維新だ。
高校の図書室に戯言シリーズをリクエストしたのは私だった。私が読破しない限りカウンターの隅で確保され続ける続刊達に、麗しい恋人を持ったかのような満たされた独占欲を感じていた。
キノの旅/時雨沢恵一
新装版出てるの知ってた?私は知らなくて「知らない表紙だぁ!」って新刊から遡っていたら、流石に10巻を逆に超えたあたりで気付きました。新装版が出ているということ、そして内容も殆ど忘れていることに…。
相変わらず面白い。エルメスとキノの会話に磨きがかかっている。もうずっと読んでいたい。Twitterを見ようかな、みたいな目慰み(目慰み?)の時にキノの旅を読んでいる。
花夜叉殺し/赤江瀑
表題作は花の芳香色狂いによって乱れ堕ちていく庭師と女と、そしてもう一人の庭師の物語だ。むせ返るような色気と、狂気がいつの間にか物語に紛れ込んでいるその様は他に類を見ない妖美がある。動機が止まらないというか、狂わされる作品。
好みで言えば、『万葉の甕』と『八月の蟹』が好き。万葉の甕は、ホラーテイストの良さというよりも、物語序盤の「万葉の甕」という唐突なキーワードとこの最後に自死する千次の物語を繋げつつ、「クライマックの死」をいかに美しい花火とするかという小説の作りにやられた。八月の蟹は、最初の主人公男女の関係の紹介の「体の馴染みができている」という描写が良いなと思った。燃えるような何かとその炎に落とされた影の行き場のなさの対照が、この両作品では顕著だったと思う。
『正倉院の矢』における姉、この泉鏡花などの幻想文学に現れる“イノセントな姉”論について我々は深く語るべきなのかもしれない。一度その行き場を失い、それでも信じ、裏切られ、再度天上へと向かう“姉”という概念のの堕天と追天のその様は、幻想文学イノセント姉論を語るにおいて一読すべきである。かくあるべし、という魂の声がある。
星踊る綺羅の鳴く川/赤江瀑
こちらは表題のイメージの通り。黄泉とも地獄とも冥府ともいえるようなくらやみの中に歌舞伎の女形が立ち、此岸の者を嘲笑う。闇の中に光があり、光の中に炎が、桜が、酔いがある。そしてまた闇がすべてを食らうてく。
『花夜叉殺し』に連なる短編は人間の生気を源とした耽美を描いていたが、こちらは一転して死を源とした夢幻が描かれる。とにかく描写と流麗な台詞が美しく、空間は文字を超えてこちらを飲み込んでくる。
開かせていただき光栄です/皆川博子
『花夜叉殺し』読書会で「今こういう耽美系を書いている作家と言えば…」で皆川博子の名があがった。ただ、あまりにも著書が多過ぎる。取り敢えず名の知れたものからということで本作から手を出してみることとなった(ちなみに次回課題本になった)。想像の5倍くらい面白かった。ミステリとしての謎の牽引力もあり、そして皆川博子だから描ける繊細さがあり、気付けば読了していた。
聖女の島/皆川博子
これほど論理的に自己分析できる私は、狂者ではない。
結論が出て、私は気分が晴れ晴れした。
生まれ、笑い、眠り、目覚め、草を食み、涙し、微睡み、死ぬ。それが多くの生き物の姿である。生きているとはそういうことである。
この小説の狂気は生きている。
少女庭園/矢部嵩
あらすじから、よくある迷路ホラーやバトロワホラーを想像していたら、全然違った。恐怖を招くために設定があるのではなく、設定があって世界があって、そこに時々恐怖が生まれる。
矢部嵩は初めて読んだんだけど、現実の切り取り…というか抉り方の抉り口が不気味なほど綺麗だった。
そのまま羊歯子はぼんやりしていた。あまり知らない目覚め方だった。
わずかに息苦しさを感じて二三度咳払いをしたが、上手く追い払えなかったので、狭い部屋のせいかもしれなかった。
こういうそこにある何かおかしい気がするのにそのまま何もかもが進んでいく時の、気付けば良かったはずの違和感を違和感なく描写する。脳はアラートを出していないが、この快楽がどこかおかしいものであることを私は理性的に知っている。
裏世界ピクニック/宮澤伊織
異世界転生モノの一種かと思っていたらオカルト小説だった。ネットロアや都市伝説の怪異が実在する裏世界を探検する女性二人の話。現実側でこういった怪異が現れる、現実が反転する、別空間化するといった手法はよくあるが、「そういうものが完全に別世界で存在している」という世界観は珍しいなと思った。というか、そういう怪異をどのように現実世界とリンクさせるのかという解釈を楽しむのが、こういうオカルト主題小説の醍醐味なので、そういう部分では面白かった。まぁ…怪異の
ただ、この女性二人にフォーカスし過ぎていて、同じく裏世界に巻き込まれた人や現実側の帳尻が殆ど描写がなくおざなりに思えた。続編が出ているようなので、そちらで補完されているのかもしれない。来期アニメ化とのことなので、楽しみ。
コロロギ岳から木星トロヤへ/小川一水
今まで読んだ時間SFものでもトップ3に入るくらい面白かった。タイムパラドクスへの解消が上手いのもあるが、それ以上に時間の流れとドラマの見せ方が非常に魅力的だった。天冥の標の次に好きだな。初めて小川一水を読むならこれを薦める。(天冥の標以外で)長編を読むならこれが1番良いと教えてくれたフォロワーに感謝。
読書は「自分と好みの似た人が絶賛していた本を読む」が一番アタリやすく、読書体験も清々しい。私の月記録も誰かにとってのそうであると嬉しい。