あれよあれよという間に冬が終わった。
春?春もいつ来たのか分からない。とにかく各種パン祭りが開催されたことだけは察知していて、白い皿に必要な点数はもう集まった。白い皿がもらえたら、それはもう冬の終わりだ。冬は明後日くらいに終わります。
小説
ガール・イン・ザ・ダーク 少女のためのゴシック文学館/高原 英理(編)
おそらく望む通りの雰囲気の小説*1が収録されており、望んだ通りの雰囲気を味わうことが出来る。「トミノの地獄」について、何故このような詩が出来たのかわからないという解説がとてもこの詩の誕生に相応しくて良かった。
アルモニカ・ディアボリカ
前作『開かせていただき光栄です』の続編にあたる。
前作ありきの物語であり、今度の話はナイジェルがメイン。前作よりも物語自体の錯綜がかなり強めになっており、全体像を把握するのに少し苦労した。それでも謎が牽引する面白さ、キャラクタの魅力はさすがのもの。
前作でキャラクタが出来上がっているので、それぞれがより活発に動いてくれてとても楽しめた。とは言え、読了後の爽快感という意味では私は前作の方が好きだな。
やや運命の牽強付会的なところがあり、なんとなく飲み込めない部分もあったが、ミステリにおける謎と探偵と警察(法)という三つ巴を時代背景という舞台でこのように調理してくるか!というあたりは、前作に引き続き見事な着地点である。
ストーカー/アルカジイ ストルガツキイ,ボリス ストルガツキイ
これは下記記事を読んで、面白そうだなと思って手に取った。この記事は非常に面白いので、まずこれを読んでください。
ある日突然、地球が異星人により侵略され、その土地は得体のしれない存在が跋扈するようになっていまう。人々はそこを「ゾーン」と呼ぶようになり、「ゾーン」から”お宝”を獲ってくる「ストーカー」と呼ばれるならず者たちも生まれ始める...といった話。物語は熟練ストーカーである主人公の一人称視点で進んでいく。
とにかく、「得体のしれない存在」とのコンタクト(コンタクトですらないのかもしれない)における、恐怖心・精神的錯乱の描写が凄まじく鮮やかである。徐々に自分の思考が”本能”に侵されていく過程での独白など、こちらまで狂いそうになる。
本書ではこういった「未知とのコンタクト」と並行して、「ゾーン」に纏わる....というよりもゾーンがあるということを前提に生きている人間たちの絡み合いも描く。解説曰く、映画としてはやはり後者(主人公の生き様)をメインに描かれているらしいが、小説としての主題は「ゾーン」が存在している世界であって、それをある一人の人間を通して描いているにすぎない、と思う。
それはおそらく原題の直訳である”炉端のピクニック”にも表れていると思う。
個人的には『ストーカー』よりも原題ののほうが良かったと思う。まぁ映画との兼ね合いがあったんですけど...。
「未知との遭遇」というテーマが抱える根源的なアンチ・リアルに有無を言わさぬ回答を突き付けたのが本作であると思う。人間の恐怖や「存在」の描写だけでも充分魅力的だが、SFとしての内容も非常に面白く、そして結末の締め方も見事である。ぜひ読んで欲しい。
南十字星共和国 /ワレリイ・ブリューソフ
『地下牢』『姉妹』が好きだった。こういう、寓意のない民話?のような話は好きだ。小さなころに民話や伝説を集めた各国ごとの『〇〇(〇〇は国・地域名)のお話』という感じのタイトルのシリーズ本があって(もう思い出せないが、こぐま社の「子どもに語る」シリーズかもしれない)わくわくしながら読みつくしたことを思い出す。
特に『姉妹』はどれを選んでも選ばなければならないとなった時点でもう人生終わりみたいなところは最高だった。シャルル・ペローの『赤ずきん』に代表される様に「これはどういう物語なのか」を読み手に委ねる不気味さも味わいの一つだと思う。
表題作である『南十字星共和国』は、架空の背景を持った架空の国家が「撞着症」という精神病によって崩壊していくまでを通信社のレポートという体で記述した短編。すごく良かった。ウィキペディアもそうですけど、ドラマを極力ドラマにしないように描くというスタイルは、自分でその行間なり背景を読解することになるから、想像力と感受性の接続が早くなって心がザワザワする。
とはいえ、実は全部読み切るのが結構キツくて、2,3編は斜め読み状態でした。伏線のない描写と独白が続くとどうしてもダレてしまう....。何かのアンソロジーに入っていればかなり心に残ったであろうものが多かったですが、通しで読むとどうしても単調に思えてしまい、ちょっと向いてなかった。
ただ、これで読書会をしたところ、自分の読み方とは違う視点での分析を多々聞けたのは非常に良い経験だった。割と強制的に読む機会がないとオススメ本も読まないし、「自分にとって面白かったか」だけで判断しがちなので、読書会のありがたさを実感したところ。
日曜は憧れの国/円居挽
ティーンズ向けに特化した小説だな、と感じた。あとがきで作者自身も「自身の経験をもとに十代に向けてこのような人生の転がし方もある(意訳)ということを伝えたかった」と書いている。
語としては、ひょんなことから発生する日常の謎を4人の少女が解いていく、それと同時にそれぞれの少女が内省していくという形式なのだが、少女たちの台詞が「~なのサ」などと極端にキャラ立ちに寄せているのが読んでいてキツかった。ただ、小説をあまり読まない十代にとっては非常に読みやすい配慮だろうし、そういう層がこの本を手にとって作者が望んだ通りの何かを受け取れたとすればこの小説は「面白いかどうか」という評価軸を超えたところで価値を持つことになる。
そういう役割で出来上がる小説があるのか、と目から鱗だった。
筐底のエルピス/オキシタケヒコ
理詰めの設定に萌えられるかどうかだ。
殺戮因果連鎖憑依体という悪鬼のような存在が人間にとりつくと、ヒトは殺戮衝動に捕らわれる。「因果」とあるのは、この悪鬼が「とり憑かれた人間を殺した場合、その殺人に因果を持つ加害者へ転移する」という法則を持っているためだ。そして主人公たちは、改造眼球『天眼』を宿し、独自の特殊能力『転移フィールド』を使って、その悪鬼殲滅に挑む――というのが大まかなストーリィだ。
この設定がかなり面白くて、法則はきちんと自然界の法則と同じように成り立っているのだ。そういう習性があるとかではなく、「法則」なので当然その穴や奇抜な転用で悪鬼を封じることが出来る。また、当然それは討伐側にとっても超えられない法則として制限のあるゲームとなる。
例えば、前述の「転移する」というルールは当然討伐者にも適用される。そこを利用して、「憑依された人間を殺して、自分に鬼を憑依させた後に自殺する」というトリッキーな討伐が成り立つ。殺した人間が自分である以上、鬼にとっては憑依先の無限ループというエラーに陥ってしまうのだ。このあたりはかなりプログラミング的ともいえるだろう。もちろん、自殺とは言えすぐ蘇生するような”自殺”であるのだが、こういった設定の扱い方にこの小説の魅力がある。
Darker than Blackの「契約者」ルールや十二国記の「天帝」でもそうだけど、ルールそのものが人間の善悪や利・不利に関係なく独立して存在しているという世界観がとても好きだ。私は「整然」という状況に萌えを感じる人間です。
ただ、全てが陰鬱というか、どうにもキャラ愛のような部分がなかなか湧いてこなくて続刊を読み進めるのが難しかった。基本的に、人が死ぬ状況ばかりなので、というか人が死ぬことで物語が回り続けるので、皆めちゃくちゃ傷つくし、感情もボロボロにされていく。そんなに頑張らないで...生き急がないで....。
設定としてはかなり面白いのだが、精神的に疲れてしまって3巻で止まってしまった。
映画
シン・エヴァンゲリオン劇場版
はい。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』感想 - 千年先の我が庭を見よ
ゲーム
ペルソナ5
クリアした。最高だった。
ネタバレなしの感想はこちら
kiloannum-garden.hatenablog.com
ネタバレ全開でOKな人はこちら
kiloannum-garden.hatenablog.com
テイルズ・オブ・ヴェスペリア
うぉおおゲームって楽しい!の気持ちが盛り上がって他のRPGをやることにした。(この流れよくあるな)
テイルズシリーズは遥か昔にエターニアを友達の家で2Pをプレイしていた記憶しかない。うちにゲーム機はなかった。
スキットと呼ばれるキャラ同士のかけあい小劇場も 、料理も面白い。冒険している感じだし、成長も楽しい。でも求めているものが何か違うな...という戸惑いがずっとあって、モチベーションはゆるゆると降下中だ。
戦闘の操作が難しすぎる。もはや格ゲーだ。私は格ゲーが苦手だ。右と左でボタンを二つ同時に押すという作業は無理です。Ctrl+Z以上のことを求めないでほしい。
左スティックで移動なのに、左スティック方向と四角ボタンの同時押しで技が出るのがよくわからない。ウワ~ン!操作が多すぎる。
また、戦闘のタイミングもストレスだ。どのタイミングでボス戦になるのかが全然わからないため、まず初見で死ぬ。チュートリアルで必ず全滅するフローが数回行われた後、まったく同じシチュエーションの繰り返しで普通に全滅する戦闘が始まる。「えっこれ死ぬの!?」みたいな展開が多い。
真の冒険とはまぁそういうものだが、直前のセーブポイントの位置が悪く、すぐさま戦闘開始にはならないのだ。細かいところでストレスがたまる。
最後に、俺は修学旅行の引率がしたいわけじゃないってことなんだよ。
序盤は、主人公であるユーリが成り行きで箱入りお嬢様とガキンチョ2人と犬と一緒に旅をすることになる。しかしお嬢様はポアポアしとるし、女子はすぐケンケンしとるし男子はグチャグチャ言うとる。犬は何も言わない。グループが不穏な方向にいきそうになるたびにユーリ先生が「まぁまぁ...」と宥めている。
はやく~!!大人!大人出てきて!
という感じで、システムとしても物語?としても魅力を失いつつあり、惰性と瞬間的な面白さだけで続けている。この感じ、無料スマホゲーですわね...。もしかしたらもうちょっと進めればハマるのかな、と思いつつプレイをしている。
かいたもの
忘れられない夢を見る。
*1:『ガール・イン・ザ・ダーク』収録作品
「獣」モーリーン・F・マクヒュー/岸本佐知子訳
「トゲのある花束」立原えりか
「サイゴノ空」川口晴美
「想ひ出すなよ」皆川博子
「ふしぎなマリー」保富康午
「魔法人形(抄)」江戸川乱歩
「緑の焔」左川ちか
「不死」川端康成
「青ネクタイ」夢野久作
「うたう百物語(抄)」佐藤弓生
「夜の姉妹団」スティーヴン・ミルハウザー/柴田元幸訳
「枯れ野原」深沢レナ
「美少女コンテスト」小川洋子
「モイラの裔(抄)」松野志保
「ひなちゃん」松田青子
「夢やうつつ」最果タヒ
「ガール・イン・ザ・ダーク」高原英理
「嵐が丘」シルヴィア・プラス/高田宣子・小久江晴子訳
「八本脚の蝶(抄)」二階堂奥歯
「血錆」田辺青蛙
「トミノの地獄」西條八十
「満ちる部屋」谷崎由依
「水妖詞館(抄)」中村苑子
「ファイナルガール」藤野可織