貨幣経済アレルギーとゼンゼンゼンジャナイ

3年かかってやっと積立NISAを登録した。

この3年の内訳は、重い腰を上げるのに2年11ヶ月、調べてやる気を出すのに3週間、諸手続きに1週間である。まぁ概ねメンドクセェとの戦いであった。

かの戦いではこの本にお世話になった。マジで基本情報しか載っていない39ページの本(prime readingで読める)だが、やる気を出すのに一番効いた本だ。39ページというコーヒーブレイクで読み切れるような量が初動に相性が良い。

ここまで読んでくださったあなたには、「自分もつみたてNISAを始めてみたい!」という気持ちが生まれたでしょうか? もしそうであれば、間を置かずに証券口座開設の手続きに入りましょう。

結局、こういうのは準備をする/実際に事務作業に取り掛かる、みたいなところのハードル(お前が積み上げたメンドクセェの山)がめちゃくちゃ高いのであり、それを越えさえしてしまえばあとは勢いで何とかなる。(ならない場合もある)まぁ今回は何とかなった。ヨカッタネ…。

 

自分はマルチタスクも得意だし、事務作業も苦では無いし、「やんなきゃいけない手続き」みたいなものをもきちんと計画立てて行うタイプだが、金勘定だけがめちゃくちゃ苦手である。家計簿がつけられない。経済もダメ。円安と円高を考える時に、一回頭の中の日本とアメリカの間でハンバーガーの売買取引をしないとどっちなのかが分からない。数学が苦手なわけではない。むしろ得意な方だった。ただ「お金の問題である」と考えるだけで頭の中がこんがらがって思考が乱れてしまうのだ。可哀想に……。

昔、「STAMPS」という希少切手オークションを楽しむボードゲームで遊んだことがあった。

当然のように全く楽しめなかった。「お金を利用した駆け引き」にワクワクするゲーム性を全く感じることができないのだ。多数の思惑が飛び交うテーブルで緊張し、ただただ失われる可能性のある財産に怯えながら、「もう俺はオシメェだ」みたいな気分でゲームに臨むことになる。地下賭博場に連れてこられた多重債務者か?何が私をそこまで乱すのかは分からない。トラウマになるほどの貧困があったわけでもない。でもお金について考える時、思考は鈍り無意味な焦燥に決断力は落ちる。

貨幣経済にアレルギーがあるのか?

 

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シルバニアファミリーで上手く遊ぶ事が出来ない。

以前このような記事を書いたところ、Twitterのフォロワーより「unpacking*1というゲームを思い出した」と教えて貰った。開梱?そう、開梱ゲーというものがあるのです。あるんだって。

どうやら引越し後の段ボールを開梱し、様々な物を部屋の中の“所定の”位置に置いていくゲームらしい。どこに何を置くべきか…という架空の住人の性格に基づく「正解」を憶測しながら配置する。へぇ…なるほどね…。

この禅の要素を含むパズルゲームで、人生の様々な段階にいる人たちの荷物を荷ほどきし、彼らの物語に触れましょう。

禅!?そうか、あの作業は禅だったのか……。物を配置し、そこに架空の人生を演出する。言われてみれば確かに抽象的には枯山水とほぼほぼ同じである。

シルバニアファミリーは禅だったのだ。“遊び”ではなく、”整える“作業としてのシルバニアファミリー。上手く遊ぶ必要などなかったのだ!

 

と、いうことでデジタル版シルバニアファミリーを期待してSwitchで「あつまれどうぶつの森」を始めた。

無人島移住パッケージなるもので無人島へ行く。ワーイ!どんな家に、島にしようかワクワクしちゃうな…。

初日はキャンプファイヤーの前で桃ジュースで乾杯して終わった。のどかだ。日暮れまでに拠点を確保する必要のない無人島生活って初めてだな…。

思えば、今まで無人島に到着したとなれば先ず先に雑草で縄を結い、そこから石と木の枝で斧を作り、現住生物に怯えながら「どれだけ早く安全な生活が出来るか」を目的に生きてきた気がする。でもここではそんな心配も焦燥も必要ないんだ。ゾンビに怯えながら生のコーンを齧る夜を過ごさなくても良いし*2、崖からの落下ダメージで死ぬこともないし*3 、絶え間ない空腹を氷と肉でミートボールの錬成で乗り切る*4なんてことも無いんだ!凄い、文明って凄い!文明ってあったかい!

 

しかし喜んでいたのも束の間、翌日から私はこの「文明」に殺されることになる。

 

移住費用として「たぬきマイル」なる楽天ポイントのような擬似銭で負債が残され、あれよあれよと住宅ローンが組まれる。たぬきマイルは日々の行動タスクで貯まる。ヒイィイイイイィィ…ポイ活!

「島民代表」という名のもとに雑用が押し付けられ、とにかく金が必要になる。インフラ整備するんも、大丈夫だも住民の皆で寄付をしあって建設するなも、とか言うておるが実際に住民(NPC)が出す金は雀の涙程度で、結局は大半をプレイヤーが出すことになる。って税やないかい!!これは税!!

結局集めた素材で作った製品を売って、得た金で家具を買う/整備工事代に充てる生活だ。内職か?

数多のサンドボックスゲームの基本たる「素材を集めてクラフトして家を飾る」の過程に貨幣経済が組み込まれるだけでこんなに虚しくなるなんて思ってなかった。マネーマネーマネー…素材集めの作業も金のためだと考えるだけで全てが「「「労働」」」になってしまう。

こんなの…こんなのもう現実世界で充分やってますですわよ!!!

 

あんなに安心を与えてくれた文明が、貨幣経済と擬似行政となり私に牙を剥いている。

否、そうではない。安心はタダでは手に入らないもので、これが文明の当然あるべき姿なのだ。安全にはコストがかかる。(それにしたって他のカワエエアニマル住人達はフリーライダーすぎやしねぇかな)それを社会規模で実現しようとしたのが、人類が編み出した行政やら貨幣やらというシステムなのだ。

ここには正しく文明がある……。

 

あるのはいいけど、それはこっち(現実)にもあるんで、目下ゲームには少し食傷気味である。とりあえずクリアという概念があるらしいので、それまでは頑張ってみる。あと友人と「時間が合ったらお前の島に行くでな」と言って時間が合い続けてないので、それまでは整えてみようと思う。俺の島を見に来てみろよ、という方が居たらお声がけ下さい。

あとこれ全然禅じゃねぇな……全然禅じゃないよ!!!

 

 

 

*1:文脈とは関係ないが、このゲームを紹介する記事としてこちらも良い記事であった。バイセクシュアルの表象とモノの方を向くこと お引越しゲーム『Unpacking』をやってみた - wezzy|ウェジー

*2:7Days to die。ゾンビがいる打ち捨てられたエリアで建築サバイバルをするゲーム。7日日毎にゾンビが大量に押し寄せるのが特徴。火や音に反応してゾンビが来るという設定があり、臆病な私は温かい食事を摂ることすらできず、隣家の倉庫から飛び出してきた狂った野犬によって死んだ。

*3:Ylands。裸で無人島に降り立ち、クラフトサバイバルと探検を楽しむゲーム。自動化こそないもののマインクラフトのローポリ版のような感じで非常に楽しい。外海へ進出すると別の島があるというのはまさに大航海で、新島見つけた時の喜びはなかなか味わえない。サメがかわいいゲームとしても有名。サンドボックス系では一番楽しかった。是非ともSwitchに来て欲しい。

*4:Don't starve together。狂気と空腹に苛まれながら、どれだけ長く生活できるかを頑張るサバイバルゲームSAN値(sanity値)が下がると「何かおっきい怪物がくるよ!」「それこっちには見えてないよ」という本物の狂気体験ができる。