2020年8月のこと

 八月は忘却の季節だ。

鮮明な空の青さと絡みつく熱気は未だ鮮明に残る。

膨大な時間である一方で均一化された日常はとっくの昔に時系列を失い、40日ばかりの空隙はどこにもいけないまま空の青さと熱気を携えて今もそこに残っている。

もう会わない誰かを思い出すときには、顔も髪の長さも繫がなかった手の形も名前の呼び方も何もかもが記憶の砂漠の中で、私はただ境界のない砂粒を無為に撫でるだけとなる。それでも唯一、ぼんやりと「その人が何を好きだったのか」だけがはっきりと記憶に宿っている。

あの頃の、誰が、Bump of chikenのどの曲を好きだったのか、だけをまだ覚えている。

 小説

冥談/京極夏彦
冥談 (角川文庫)

冥談 (角川文庫)

 

 前回「新しいコトにチャレンジ~」とか言ったので、ホラーに挑戦することにした。

ホラーというものについて自分の所感を纏めたのがこちら。

どれも甲乙つけ難い逸品ばかりあったが、敢えて選ぶなら『風の橋』『遠野物語より』が好きだった。

日本SFの臨界点[怪奇編][恋愛編]/判名練(編)

SFテーマ別面白アンソロジー、というよりは埋もれた佳作を集めたアンソロジー。短編集が無い、何らかのアンソロジーの一編としてしか存在しない、物好きだけが発掘できるような隅の方にあった作品を集めている。編者の言う通り、このアンソロジーによって広く読まれ「もっと読みたい」の声が増えれば短編集が出たり作家も頑張って新作を出したりするかもネ…の祈りが込められた本である。

いい企画だとは思うが、単純な面白さとしてはそこまででもなかった。【怪奇編】は「ぎゅうぎゅう」、【恋愛編】は「劇画・セカイ系」がまぁ…面白かったかな。臨界点...うーん臨界点?

折角ならまず判名練が、ドチャクソ面白かったデェ!と影響を受けた短編集アンソロジーを読みたかった。あの「『なめらかな世界とその敵』の判名練」という名前をネタにしてアンソロジーを売るなら、我々は判名練という作家に興味があって釣られるのであって「実は隠れているオモシロ日本SF」はどうでもいいんだよな。先生のルーツの方が知りたい。

まぁこれは単純な「期待してたんと違う」という感想なだけなので、この企画だとかアンソロジーの批判ではない。あとがきでご本人が「アンソロジーの企画承ります」「自分の小説も書かないとなので」と言ってくれているので、楽しみに待っています。

博奕のアンソロジー/宮内悠介(編)

どれもかなり面白かった。そもそもドラマが起こりやすい「博奕」というテーマのお陰もあるんだろうけど、どの作品もとうなるんだろう?のハラハラと博奕ということそのものの解釈を描いていて、飽きずに楽しめる。今、何か読もうかな〜と迷っているなら取り敢えずこれを読めば間違いない。

編者(リクエスト者?)の宮内悠介の作品も面白かったが、星野智幸の『小相撲』が良かった。博奕というテーマをのメタを一番小気味よく描いていたのがこの話だったと思う。

そして何よりも日高トモキチの『レオノーラの卵』が良かった。良かった、というかドストライクだった。何だろう、天才じゃないですか?…。登場人物、会話、話の全体像、全てが少しずつズレていて、それでもきちんと纏まっている。纏まって…?いや、纏まってなんかいない。もともと霞のような話だ。話?いや、話ははっきりしているんだ。ただ何も分からない。私達は知らない因果律と知らない世界の狭間の、何だか誰だか分からない4人の会話を聞いただけだ。会話は分かる。でも他は何もわからない。多分、彼らが自分で分かっていることの他には……。

もともと漫画家が基軸?らしいが、本ももう一冊出しているらしい(里山奇談)ので、次はそれを読もうと思う。絶対読みますよ…。

アニメ・ドラマ

TO BE HEROINE

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https://watch.amazon.co.jp/detail?asin=B07D3GKBSJ&territory=JP&ref_=share_ios_season&r=web

聞いたことないけど評価の高いアニメがあるな、と思って観てみたら想像以上に良かった。オススメ。

中国語音声と日本語音声を世界観の相違で上手く使い分けているのも面白い。

ありがちな異世界モノかと思いきや、世界観背景にも人物背景にも丁寧な作り込みがある。

その丁寧さを見せる前にバトルとギャグのテンポで視聴者を「オッ面白いやんけ」と思わせてくる構成もうまい。最初から感情のグジュグジュをやってしまうと面白くないからね……。

なにより独白による叙情が美しい。何気ない台詞の中にはっとするノスタルジーがある。本当にね、物語そのものに真新しさや鮮明さがあるわけじゃないんだけど、よくあるシーンでも呟かれる台詞の質が物凄く高い。

観て欲しいので詳細は書かない。

ここにね、それを書いちゃうと見ている時に「あーこの台詞ね」ってなっちゃうのは勿体ないから。連綿と積み上げられてきた世界観と人物の背景の中で放たれる言葉を、「今」として聞くときの私達の感情はとても特別なものよ。このアニメにおいてはその特別さはかなり重要なので。

観て。

 

Game of Therones

シーズン5まで来た気がする。

飽きた。

中世っぽい時代背景の所為もあるだろうが、とにかくメインキャラクターに明確に欠点が用意されているのは段々鬱陶しくなってくる。全力で応援したい魅力的なキャラクターがいない。感情移入が全然出来ない。どの王だとか騎士だとかにもつきたくねえな、という気持ちだ。誰が天下取るのかとかどうでも良くなっちゃった。

アリアとティリオン編は面白かったんだけど、この二人に関しては欠点が「子ども」「身体的特徴」という設定だからなんだよな、と気付いて虚しくなった。そもそもこのドラマの脚本というか魂というのか…そういうのが俺様の性に合わねえんじゃねえか?という直感だ。

取り敢えず最終シーズンがprimeに無いので、配信されたらまた見始めようかなと思う。 

映画

プロメア
プロメア

プロメア

  • 発売日: 2020/05/24
  • メディア: Prime Video
 

 フーン....という感じ。

ストーリィは王道をプロットのみで落とし込んだかのようなスカスカストーリィなのだが、それを演出によって空疎にならないように仕上げている。4コマ漫画のようなものだ。

スカスカ、つまり因果を大幅にカットするためのデフォルメとスピード感の出し方は上手い。ここでいう因果とは、登場人物の感情や物理法則のことだ。こういったものを主人公の直情馬鹿さと爆発が画面を突ッ散らかすことによって、グイグイ物語を進める。「細けぇことはうるせえ!俺はこう信じてるからこうする!それだけだ!」の直情の前に描くべきだった繊細な感情は消え失せ、独特の色彩のキュビズムめいた爆発は物理法則の違和感をサラリと流していく。主人公というキャラクター性も爆発もデフォルメされている。

映画単体として見れば面白いわけでもないし、画面も何かよく動いているな〜というものだが、観ている最中に話の粗さや画面の退屈さをあまり感じさせないのは凄いなと思った。青春時代のハンバーガーみたいなものだ。

 

ただ、ギャグが足りなかったなと思う。キルラキルがあれだけ面白かったのはストーリィの良さというよりも満艦飾の存在があったからだ。デフォルメによって物語を暴力的なスピードで進めていくならば、ギャグを噛ませてくれないと後味が無くなってしまう。この映画が「見ている最中はマァマァ面白かったけど、後に何も残んねぇな」という感想になってしまうのは、ギャグの圧倒的な不足によるものだ。

 

90分という尺の短さ(だってアニメ3話分しかない)に起因するのだろうが、ちょっと勿体ない映画だなと思った。

今月かいたもの

今月はホラーについてちょっと語っておしまい。

アイス

牧場しぼりのアフォガード味。うまい。シャリシャリとクリームのバランスが革命的であり、冷静だと思う。うまい。

書いた時点ではグリコ公式サイトに載っていたのだが、8/25時点では消えてしまった。(ということでAmazonリンクに差し替えました)スーパーに急げ!

 

次回予告

  • 『三体Ⅱ』を一応読み終わったので、来月感想を書く。例によって読書会が月末にあるので。
  • 楽しかったゲーム(細胞とかワンワンゲー)についても書こうかな〜と思うんだけど、面倒くさくて書いていない。ゲームの面白かったとかオススメってさぁ…ばんばんゲームのスクリーンショットとか撮って“魅せ”なきゃいけないみたいなとこあるじゃないですか。あるんじゃないかなぁ…。そういうのが面倒くさい。画像とかなるべく使いたくない、何故ならはてなブログアプリはクソアプリだから…。