『NOPE』感想

あらすじがおどろおどろしい感じだったが、ホラー目的の映画じゃないと聞いて観てみた。

画面の中のアイテムの置かれ方とか、意味深な台詞とか、メタファーっぽいものはあるものの全体像や主題との相互作用みたいなものが上手く掴み切れない映画だった。ただ、そういった解釈を全くしなくても、ただの娯楽映画として面白い。それが凄い。見終わって「なんかわかんなかったな~」じゃなく、きちんと物語としてカタルシスのある終わりがあり、その上で意味について無限の考察ができる。良い映画ですね。

 

以下、ネタバレの考察です。

・ちょいちょい絵?カメラアングル?がいい。

・開始15分くらいで出てくる道端のアレ(スカイダンサー)、Eテレ『いないいないばぁ!』うーたんの「だいじょうぶんぶん」の歌のだいじょうぶんぶんだいじょうぶ!の時にバックでクネクネしてるヤツという認識が強かったので、うーたんの気持ちをアゲる以外の用途で…こんな……荒野に!?という謎の気持ちになってた。

・まさか…これが伏線とは…ね!

・飛行物体による急襲の際、大雨の中、OJがそっと車のドアをあけて、こっそり様子を伺い、こりゃダメだな…って感じでまたドアを閉めるシーンが一番良かったです。あそこがこの映画のなんか、意味的なクライマックスな気がしました。直観です。

 

演出とか

・黒人が巨悪に立ち向かう映画を見ると、そういうメタファーかなと思い、そしてそう思う自分の感性が愚かしく思える(なんでもかんでもそういう風に世界を解釈するなよ?)ため、思考に躊躇いが生じる。けど、今回の映画では、エメラルド(妹)が「世界初の映画に出たのは黒人だったのよ!」と意識的に言葉を使っていて、ああそういう目線で見ていいんだって思った。

・ジャンプスケアっぽいシーンはあるものの、「画面に驚かせるモノが出てきてから、俳優が振り返って気づいて驚く」みたいなビックリシーンへの観客へのワンクッションがちゃんとある作りになっていて、その時点でホラー要素への信頼がUPしたので最後まで見ることができた。(私はビビらせホラーが苦手)

・こういう、”見ている”観客のへアプローチが随所にあって、視聴における信頼感みたいなものが育まれるのは面白いなと思った。「見る」というのが一つのテーマなことも拍車をかけている。

 

テーマとか

・ゴーディ(猿)を娯楽消費物として鑑賞することが惨劇を招き、飛行物体は遠くから観察する分には問題ないが、目を合わせることは捕食を意味する。一方で調教師という「適切な距離を設定する」ことを生業とするOJ達は飛行物体との闘いに勝利する。何かを見ること、ひいては何かとの適切な敬意、距離、付き合い方が身の破滅を招かないための生存条件だよ~みたいな話かと思った。

・見ることの対象との距離、「鑑賞する」「観察する」「目を合わせる」が例として出されてる。

・映画考察サイトではよく支配や征服って言葉が使われてて、確かに冒頭引用からはそういう物語だって読むのが正しいかもなんだけども、猿や飛行物体といった自然物を通じてそのテーマを導かせようとするのなんかしっくりこないな~と思った。一方的にこちらを捕食する圧倒的な脅威に対して、「力での支配は惨劇を招く」ってそうじゃなくない?どうにもならねぇデカい脅威やコントロール可能な脅威との、適切な距離の話じゃない?俺が舞城王太郎を読みすぎなのか?

・コントロール可能な脅威、単純に(人々の)怒りです。