ワールドトリガーが実質e-Sports漫画だという話

 あまりにも面白くて最新刊(22巻)まで一気読みしてしまった。

これね、実質e-Sports漫画なんですよ。

 

「トリオン」という魔法のようなエネルギーがあって、それを「トリガー」というデバイスを介して武力として使う。世界観の基本では、そのエネルギーを使って現実世界と異世界の間で攻防が繰り広げられているんだけど、物語としてはそうそう毎回戦争しているわけでもなく、どちらかというと「現実世界側」の兵士たちの訓練の様子がメインになっている。そう、この訓練が「チームを組んでトーナメントのような形でランク戦を行い、勝ち点の多いチームが戦争にいける」という実力を測る訓練なのだ。この「ランク戦」が22巻までの8割くらいを占める。

主人公チームはとある理由で絶対に戦争に行きたいので、なんとしてでも上位を狙う。

 

ランク戦においては、使える武器の種類は上限がある。しかしその武器の組み合わせ次第で新技を編み出したり、また思いもよらない武器の使い方で敵を翻弄したりする。個々人の技量・得意・相性があるので、そこを戦略と戦術で補う。

 

主人公チームには、個人技が凄いクガ君と、魔法力が凄いチカちゃんと、ショットコーラー(司令塔)の主人公(オサム君)がいる。このオサム君が、プレイスキルとしては二流なんだな。本人もそこは自覚している。だから相手チームの分析と情報収集、他人のプレイの勉強という地道な努力で「戦術と戦略」でそこを自らカバーしようとしている。これがねー本当に応援したくなる。チームで上に行こう、って発想なんだな。

 

そう、MOBAです。

 

そしてこのランク戦の見所はチームプレイによる勝ち方の多様さだ。「個人技が上手い」「火力がある」「戦術判断が上手い」「心理戦が上手い」「相性がいい」チームによって、それぞれの強みがあり、弱みがある。だからこそ、一つ一つの試合が全く違ったものになり、同じチームであっても、その時々によって戦い方が違う。

そして、戦場では、「場」をコントロールしたものが勝つ、という定石が根底にある。チェスや将棋でもそうだ。相手を自分の流れに乗せたものが勝つ。だからこそ、司令塔同士の戦術争いに一番スリルがある。

それでなおかつ、「天才的なスキルプレイヤー」はその定石を覆すことが出来るという「チームゲームの定石」もしっかり描かれている。ここが面白い。

 

MOBAだ。

 

もちろん、チームプレーの爽快感も味わえる。もう言葉を尽くさなくても大体わかるだろう。

 

MOBAだよ....!

 

そして、この漫画で面白いのはそれが「ただのスポーツ漫画」にならないところだ。

これがそういうゲームか何かで、世界一を狙う話だったら、それはバスケやサッカーと同じような漫画になっただろう。

しかし、この漫画においてはこの「ランク戦」はあくまで、「訓練」なのである。敵は目の前のプレイヤーではなく、戦争中の敵国の兵士なのだ。だから目の前のププレイヤーはまず「味方」であり、切磋琢磨する「ライバル」である。だから基本的に、ランク戦外ではお互いに相手の技術に尊敬があり、また技術の提供に躊躇いがない。一緒に焼き肉にも行く。敵国が攻めてくれば、共闘のシーンもある。

この、「ライバル」という一番気持ちいい人間関係の描き方を基礎にして、バトル漫画を描けるのは凄い。これがこの漫画の最大の特徴だと思う。これを普通のスポーツ漫画でやると、青臭くなってしまい、試合の緊張感が無くなるが、ワールドトリガーは「敵国」の存在によって自然に成立させているのだ。

 

 

そして、これが、普通のバトル漫画で、敵国とバシバシ攻撃しあうだけの漫画ならそれはそれで途中で飽きていただろう。よりスゴイ技を出したもん勝ち、だからだ。

あくまで競技であるがゆえに、戦術と戦略が活きるし、チームワークが光る。読者も安心して楽しむことが出来る。バトルと違って、「観客」「実況席」があるので、ちゃんと「それがどうして・どれくらいスゴイのか」がきちんと伝わってくるのだ。これね、大事ですよ。「なんだとー!?」でやられるワケじゃない。そこには、ちゃんと個人の練習とか戦術を組むための情報収集とか、それぞれが「どうやったら勝てるか」を考えて自分と向き合った「努力」がある。それがちゃんと分かるようにしてあるんですね。うんうん。これが見えるか見えないかは大きい。

 

MO.....!BA.....!

 

 

欠点というか、その所為で登場人物はめちゃくちゃ多い。

24チームくらいあって、1チーム4~5人なので、これだけで100人出てくる。

ここに、試合に出てこない人間や敵国の人間もいるんだから絶対に全部覚えきれない。BLEACH封神演義みたいに、頭に角が3本生えてるやつとか奇抜な服装の奴とか髪型が重力に逆らっているようなキャラクターは居ないので、覚えるのが大変だ。

ただ、そこはそれぞれちゃんと個性をつけたり、キャラクター同士の絡みを増やしたりして認識の機会は割と多めにとってくれている。このキャラ同士の絡みもね、良い。でもやっぱり半分くらい分からん。

まあ実際のe-Sportsも好きな人はトーナメントの全チームの全レギュラーを把握してたりもんね。場合によっては解説のファンだっている。そういう感じ。

 

あと蛇足だけど、女性隊員の戦闘服がスカートでもなく、胸のあたりの露出が多くないのも非常に良いなと思った。常識的に考えて、スカートで戦闘をするメリットはない。かわいさは実利は伴わない。ビキニアーマーの敵がいたら、普通は間違いなく柔らかい腹を狙って打撃する、そういうことだ。

それでいて、隊員服はチーム毎に(女の子ごとに)多少のバリエーションがあったりして、ちゃんとカワイイ。フェミニズムでも何でもないが、ミニスカートで敵をギッタバッタ倒しているバトル漫画を見ると物理法則が気になってしまう質なので、とても安心して読めた。

 

ちなみに私は烏丸先輩が好き。

精神がド安定しているキャラが好きなんだよな。

封神演義でも普賢とか天化が好きだったし。もっと烏丸先輩が戦っているとこみたい。

遠征編が楽しみだ。