シン・ゴジラ


イヤア面白かった!
ゴジラ映画を(まさかの)一本も見たことが無いまま観に行ったのだが、マァ面白いこと面白いこと。
面白さを一言で表すと、エヴァ序のヤシマ作戦部分だけを120分やった映画です。
点数?100点満点で良くない?

以下、ネタバレを含む感想です。
というか、この映画はネタバレだけじゃなくてもうPVも何も見ないで観に行くことをオススメします。

1)現実VS虚構
キャッチコピーのこの一言に尽きる。
ゴジラのような非現実的な想定外が本当に襲ってきたときに、日本政府はどのような現実的な対処をするのか」がひたすらストイックに描かれている。主人公はゴジラじゃなくて日本政府です。もっと言ってしまえば「未曾有の大災害」というのが今回ゴジラだったので映画タイトルがゴジラになった、と言ってもいいくらい。
そしてその大災害が
作中の「これは台風などの自然災害ではない、あれは生物です。駆除が可能です」という一言がこの作品の根幹にあると思いました。
序盤から大怪獣が出てきて街を破壊、努力と超科学のヒーローパワーで倒す!っていう怪獣映画じゃないんですよ。
これは友人の言ですが、この作品においては誰もゴジラのことは「怪獣」と呼んでいないんですね。
あくまであれは生物。巨大不明生物、名称もあとからゴジラと名づけられる。
そのためにゴジラをあの初期形態から登場させたんだと思います。
あの深海生物にありがちな間抜け面、知性の無い目、短い手、謎の赤い液をドパドパ吐き出しながら街を蹂躙する様は「何か得体の知れない物に日常が蹂躙されていく」という本質的な恐怖がある。
最初からゴジラが完全体で出てきてしまえば、それはもう「巨神兵東京に現る」だし、ハリウッドの神殺し映画と一緒。ただの怪獣映画になってしまう。
「コミュニケーション不可能な巨大生物」というスタート地点があるからこそ、最終的なゴジラにも恐怖感がある。その恐怖が上手いんだなあ。

2)石原さとみ
なんやったんやアレ
あらゆる人が言っているのでもう何も言及しないでおこうとおもいます。
これを除けば各キャラクターもその配役も完璧でした。
英語がある程度サマになって、色気があって日本人の女優がいなかったんだなということで。

3)日本映画、ということ
庵野監督が「面白い日本映画を作りましょう」といったとおり、本作は日本での日本のための日本映画である。
ただの和製映画という意味ではない。
「あなたの国は誰が決めるの?」「他の国に頼る前にまず、自国で解決すべきです」といった印象的な台詞。
自衛隊の「何もゴジラを倒すことだけが国を守るということではない、避難民の誘導も俺達の仕事だ(意訳)」という言葉など、おそらく軍隊ではなく自衛隊という組織を持つ日本、大震災での彼らの活躍への感動に裏付けられた台詞なんだろうなぁ。
背景には原爆投下、東日本大震災という過去も含めて、文化・精神的な背景があるらこそ我々がこの映画を「熱い!」と思えるのだと思う。
そういう意味で、この作品の扱っているテーマはとても胸に響くものがある。

4)そしてロマン、ロマン
魅せるんだ、カメラワークが。謎テロップが。
ゴジラ自衛隊の初戦、戦車が川辺に展開する様を一瞬俯瞰で映すところ、砲台の後ろからのカメラワーク、キャタピラーの軋み。個人的には砲台の発射から着弾までのディレイに萌えてました。そういうの好きなんだ
終戦のエンゲージが無人新幹線(あのテロップで「(無人)」と書かれている面白さよ)という、そして突っ込んでいくカメラワーク!無人在来線爆弾テロップはこの映画の拘りとハイセンスを一言で表したシーンである。
なお、「ヤシオリ作戦」のヤシオリはヤマタノオロチ伝説でのオロチに呑ませた御酒の名前が由来らしい。
そういえばアメノハバキリとかなんとか言ってましたね。
なるほど。

あとね、オタクが影で活躍する!有能な女性がトップにいる!全国のメーカ工場が頑張る!
物流の確保、コネでの根回し、ツテのフル活用など様々な人間の限られた努力が実を結ぶ。(ヤシマ作戦もそういう感じでしたね)
庵野監督はほんまこういうの好きやね(俺達もやね)
そして最終作戦が超兵器ではなくトンデモ作戦であるという点もすごく良かった。
複数のポンプ車がストローのようにゴジラの口に凝固剤を流し込む絵面は滑稽だが、ああいう滑稽な絵面が現実では真剣に行われているというギャップがぐっとくるんだよね。
ただひたすらに泥臭い、小さな人間達の反抗心が美しい。
そういう映画でした。

蛇足ながら、この映画に感動した人へは地方病 (日本住血吸虫症) - Wikipediaという記事をオススメします。
これも、ただひたすらに泥臭い、小さな人間達の反抗心が実を結ぶ実話のお話。
是非ご一読を。