009 RE:CYBORG

3D映画、2作目。観てきました。

攻殻の神山監督だし、中学の頃原作マンガに嵌っていたこともあって、予告から随分楽しみにしていました。

映画製作にあたっては押井監督との方向性の違いなんかもあったらしいですが…

現代とリンクした「009」を作った――『009 RE:CYBORG』神山健治監督に聞く - 日経トレンディネット

とりあえず、観てきた感想を。

1)フル3DCG映画凄い、立体感凄い
初3D映画(攻殻SSS)を見たときは「奥行きがあるなぁ」という感じでしたが、今回はフルCGなのもあって、前後に立体感がありました。
009の加速装置表現を「周りのものの時間の流れが遅く感じるようになる」という描写で表わしていましたが、その時の水滴が空中で止まっているときの空間描写が凄い。あと宇宙空間の広さ。物と物の距離というのが、とても広く感じて、これは3Dで観て正解な映画だと思いました。

2)キャラクター
原作マンガを読んでいたといっても、全部読んでいたわけではないので、キャラについては基礎知識がある程度。映画では009と001の確執がどうの〜とか言ってたけどあんまり分かってませんでした。

001:マンガの雰囲気を大事にしている感じ。安定の神山監督× 玉川砂記子さん
002:時代にそぐう様にとアメリカ国家安全保障局所属の設定。ニヒルさが消えたのは、年月の所為ってことになってるんでしょうかねぇ。劇中では一番サイボーグらしい立ち回り。
003:どこの映画評価見ても書かれているけど、もうフランソワーズ観にいったんじゃないかと思うくらいエロい。美人でエロい。フランソワーズはサーチ&シークが基本なので、攻殻っぽい可視ネットワーク表現みたいなのは相変わらずとても格好良かった。
004:全身兵器のサイボーグ。マンガそのままの雰囲気でしたが、彼の「俺の身体の武器もいまや特注の骨董品、いつ博物館に入れられてもおかしくない身分さ」という言葉が一番、現代版009という哀愁を感じさせていて良かった。
005:マンガそのまま。機械相手での戦闘では身体強化キャラってとこがとても上手く表現されていた。
006:こいつもマンガそのままですね。火を吹くだけなので、別段劇場版だからといった変化はなし。
007:めっちゃカッコイイ英国人になったけど、原作のひょうきんさが全部消えてました。最初ちょろっと出てきたけど、後半舞台裏に消えていった人
008:かわいそうなくらい活躍シーンがなかった。正直こいつ一体何の能力だったっけ状態。登場人物としての有用性はあったものの、009メンバーとしての能力発揮シーンが皆無だったのが残念。
009:なんでこいつだけ日本で擬似高校生活してるんだろうという謎。しかし加速装置が009視点で表現されていた部分はとても格好良かった。原作ファンにはたまらん描写だったと思う。まだまだ青い正義を信じていたいのか、サイボーグとして達観したの存在なのかいまいち立ち居地がハッキリしていない感じがどうもしっくりこなかった。

3)ストーリィについて
こっから若干ネタバレしていきます。
ただ、ストーリィそのものは初見のサプライズが全て、といった内容ではないので、ネタバレ観てから映画を確認しにいっても楽しめると思われ。

a))009のリフレイン設定なんだったの
ジョーは永遠に生きるサイボーグとしてのストレスをなくすため、記憶を3年毎にリセットして永遠に高校生活を送るとかいう設定だった。つまり普段は自分がサイボーグであることを忘れて生活している。
…ん?その設定いるのか…?
別にわざわざ記憶をリセットしてまで日本で生活する必要はなかったのでは…。
3年ぶりにあったフランソワーズと七夕のごとくいちゃいちゃしてたけど、完全にフランソワーズにリードされてるし。
他のメンバーが時代に合わせてサイボーグとして生きているのに、ジョーだけリフレインしてて、あれこいつこんなに心弱かったっけという残念な感じ

トモエの存在についてはビル内での手荷物点検時にジョーしかいないように扱われていたこと、003、005には見えていなかったことから脳内彼女説で正しいと思います。この設定でさらに残念な子に。
しかし記憶を思い出した時のフランソワーズの「また私だけ3年歳をとってしまったわね」の台詞でリフレイン設定が余計わからなくなりました。
もうこの設定、「そっかー3年ごとにリセットしてたのかー」でさらっと流してよかったんじゃないか。

b))彼の声とは
本作品での重要なテーマである「彼の声」とやらですが、多分これの解釈映画でもあるんでしょうなーという感想。
神とそこに付きまとう正義という概念をスタンドアローンコンプレックスによって解釈した神山監督なりの答えなんでしょう。

しかし時折出てくる宗教的なイコンについては、浅学さからちょっと理解が追いつきませんでした。

c))エンディング
これもよく評価ブログで言われてましたけど、「最後の10分いらなかったよね」の一言につきます。
正直、009アニメ(地下帝国ヨミ編)のラストを踏襲する形の終わり方でよかったのでは。
友人はあのラストで解釈の幅を持たせたのでは、と言っておりましたが、どちらかというと「どういう風にとってもいいよ〜」っていう意味深な投げっぱなしだったような気がします。多分、アニメのラストへの神山監督なりの「終わらせなければ始まらない」というオマージュなんでしょうが、最後の10分のせいで、終わった後に???というしこりが残ってしまいました。
彼の声、という存在で充分「正義」「神」への解釈が楽しめるので、エンディングは素直に終わっていても良かったんじゃないかと思います。

まぁ最後のシーンは宗教的なモチーフで表現されているだけの、「エンディング」としてのストーリィではないといった意見もありましたが。
個人的には長い時を経て人類が月へと至り、新たなる地球という舞台での009たちということなのかなと。

4)全体的に(映画代2200円の価値とは)
初見でもそこそこ面白い映画として楽しめるとは思いますが、せめて009メンバーのプロフィールくらいWikipediaで読んでから行くのがベターかと。
劇場も009世代っぽいオッサンばかりだったので、やはり基本は009ファンが期待して観に行く感じの映画に作ってあるのかもしれません。

アニメ映画としての戦闘シーンや、説明が少なくてしっかり飲み込めないものの、扱っているテーマの面白さなんかは一見の価値ありだと思います。
3Dが素晴らしい作品なので、劇場で観る価値は充分にあるでしょう。

上記で不満ばっかり言ってる気がしますが、基本的に戦闘シーン・サイボーグという特殊能力のシーンはとても素晴らしいです。大丈夫です。
なにより、開始30分での「オラ!これは面白い映画やで!」という魅せ方が非常に巧い。ガッと観客を引き込んでくる展開で始まり、ストーリィの流れが分かりにくい所はあるものの、飽きさせることのない作りになっています。

でも出来れば009メンバーが一箇所に一度に集まる、あの予告編みたいなシーンがほしかったなー…とアニメOPを見て思う次第です。