追い風に振り向けば思い出がある気がした。

春の嵐、と呼ばれる強い風が町中に吹いていて、冬の間に伸びた髪をばさばさと乱していた。

夏も秋も冬も風が連れ去っていくよな、と思った。
春だけは雨が攫っていくけども。

追い風で走っていると何かを忘れていく最中にある気がしてくる。

誰も呼んでいないのに強風の日は無性に振り返りたくなる。