なんとなく振り返った、そのなんとなくの中にさっきまであった違和感


墓場が好きだ。
田園の真ん中にある墓場、鉄塔の真下にある墓場、山間の隙間にある墓場、そういう墓場が好きだ。
寺の近くにあったり、墓地として整備されている区画にあるものではない。
生活地区の中にひっそりと、だが確実に存在する墓場が好きだ。

先日、愛知県の離島である日間賀島に行ってきた。
島そのものは自転車があれば1時間で回りきれるほどの小ささで、
小さな島内は原付でなければ通れないような路地裏で構成されており、坂も多い。
そういう路地裏をとにかく上をめざして曲がっていくと、墓場がある。
海が一望できる、墓場がある。
太陽の光を燦燦と浴びてぐんぐん育った歪な巨木がある。
邪魔になった枝が伐採されたことなど露ほども気にしていない様で、無様に聳え立っているのである。
その下に丁寧に掃除された墓地が広がっている。
細くうねる石路を歩きながら、良い場所だと思った。
一つ一つの墓に綺麗な花が供えられている。
兎に角こういう場所が好きなのだ。
生活の一部の中に死を意識させる場所が混じりこんでいることとか
そこに居ない確かに存在する誰か達によって常に存在し続けられているものとか
たぶん、名前も習性も持たない妖怪のようなものだろう。

はっきりと形を持ってくると伝統だとか芸術だとかに昇華してしまう。
その少し前の、ふっと日常の中で寄り添ってくる違和感だとか奇跡にぞくぞくするのだ。