コールで繋ぐアンザイレン

深夜、どうにもならなくなってコンビニに行こうと思って外に出て歩き出した途端、外気の冷たさや夜の静けさ、耳に閉じ込めた音楽が一気に感情を刺激してきて気付けば涙で目の前が霞んでいた。
歩けば歩くほど、誰もいない安心感と、時たま遠くの道路を走る車のヘッドライトがどうにも不安を煽るようで、ふらふらと辿りついた冬の公園で一人佇んでいた。
誰も居ない公園は、子供達が遊んだであろう踏み固められた雪が深く積もったままで、一面の白が明るいような暗いような、不思議な空間を作り出していた。
滑り台の下、雪の積もっていないところを見つけて、しゃがんでみた。自分ひとりがいるには公園は広すぎて、耳の奥で鳴っている音楽で自分の嗚咽が聞こえないようにしながら、声を上げて泣いた。漠然とした不安というのはこういう事なのかもしれない。
ああこれには、ああこれなら、芥川が死んだ理由も分かるような、
なんて思いながら曇った夜空を見上げていた。
時間を下さいだとか、休みを下さいだなんて思いながら、誰に言うんだろうってどっかで聞いた歌みたいなことを呟いて、底冷えする不安を押し殺している。
全部壊して何もかも棄ててどこか遠くへひたすら西を目指すような、そんな逃げ出したい思いからなるべく目を逸らして

電話の奥で聞こえる優しい声はやっぱり自分を現実に繋ぎとめていて、きっと容易には何処かへいけないのだなと、飼いならされた犬のような安心感を心地よく思っている。
ただ、ただ過ぎていく時間と、流れていく意識が、
何処かで澱んでいくのを恐怖している。

不安も愛も優しさも
目に見えないものほど確かであるのは何故なのだろう。