カッターナイフのシザーズ軌道


食べ終わったと思ったポッキーの袋を振ったら、チョコレートのついていない部分の欠片ばかりがぱらぱらと落ちてきた。
あれ私はチョコレート部分ばかりを食べていたのね

そう思いながら膝の上に散らばった欠片を食べる。ビスケットの味しかしない。物足りない。
こういうふとしたどうでも良いことに人生を重ね合わせてみる瞬間がある。

きっとそれは大体悲観的なことで、文学的な陶酔に近いのだろう。
なんでもないことに意味を求めたり意味を与えたりして、きっと世界の充実を図っている。

私はどうでも良い所でいちいち足を止める。
欠点の一つでもある。いちいちそんな事考えて生きてないよ、という事を無視できない。
ブドウジュースの真偽を疑ったり、商品配列の意味を考えたり、忙しい。
水面の波紋を見ているだけで、随分時間が流れていく。

もしかしたら自分の中に流れている時間が、物凄くゆっくりなのかもしれない。
最近自分には1日24時間は長すぎると感じるようになった。
18時間くらいで、もうそろそろリセットの時間にならないだろうかと思う。
時間が足りないとか暇を持て余すとか、そういう意味ではない。
もう良いじゃないか。
そういう気分になる。

キャメラル味のマックフルリレロ片手にフレンチクルリレラを買いに行こう。
そういう事を考えて、一日が過ぎていく。

久しぶりに森博嗣の本を読んだ。
相変らず隙がなく美しい。ルービックキューブみたいだと思った。
ルービックキューブって隙がなくて美しいのかな、と疑問に思ったけど、頭にぱっと浮かんだ言葉だからきっと真偽は夢の中だろう。
ルービックキューブみたいに。