綾波レイはポカポカするとか言わない

綾波レイが「心がポカポカする」と言った違和感について10年くらい*1考えてたんですけど、最近幼児を観察する機会があって、言葉にできない未知の感情を表象する時に擬音を使うのはむしろおかしいのではないかということに至りました。

 

説明します。


日常会話における擬音は、基本的には既に用法の決まっている様相に対しての言葉の圧縮です。(いま小説や漫画において擬音を文字通り音として表現しているケースの話はしてません。)

ポカポカは温かい音だし、ツルツルは滑りやすい音だし、フサフサは毛が沢山ある音です。

そのイメージの共有には、文学的コンセンサスが取られているわけですね。


会話や本や歌でそれを学んでいくわけですが、幼児はコンセンサスが取れてない上に語彙が少ないので、未知の感情に対しては結果としての快・不快くらいしか表現できません。

これは自分も馴染みがあって、病院で「ギューッと痛い?シクシク痛い?」みたいに聞かれてもギュー?シクシク?みたいな気持ちになったことがありました。シクシク痛いのシクシクは未だによく分かってません。

 

擬音は語彙の乏しさや拙さを表すことが出来ますが、ある程度「何が圧縮されているのか」のイメージを持っている前提になります。よく感覚派のキャラが擬音だけで会話を進めようとしてくるのはそういうことです。

語彙の拙さは感覚の乏しさと必ずしもイコールになりません。むしろイメージの所有を裏付ける行為であり、操る言葉はキャラクタの日常的な思考スタイルを表します。 

「温かいことは知っているが温かいという言葉が出てこなくてポカポカって言っちゃう」が綾波の脳としては正解であり、「温かいことがよく分からない」ではありません。

 

そうです。つまり、

「お前ポカポカとか言って分からんふりしとるけど、ポカポカ=温まる、心が温まるってわかっとるやんけ!綾波レイは言葉少なな美少女なんやから、わざわざポカポカなんてコミカルな擬音使うわけないやろ!」

の気持ちです。

お疲れ様でした。

*1:体感で10年なので本当にポカポカから10年くらい経ってるのかは知りません