3月のこと

3月が終わる。雨上がりの街に甘い花の匂いがする。画用紙を破いたような雲の隙間から、微かに青空が見える。季節の変わり目は好きだ。こうして無意味な寂寞が街に溶けているところも良い。手元の硬質なプレイヤーを止めれば、記憶の中の朧げな音楽を聞くことが出来る。いい季節だ。

 

忙しい日々が続いて、睡眠時間が短くなってきた。とうとう「春の麗らかな日にカーテンの裾が揺れるのを見ながらうたた寝する夢」を見た。残念ながら、夢の中の夢の中の至福の味は分かりにくい。

 

今月はちょっと長いよ。

  • 読書
コウ ケンテツの食パン食

コウ ケンテツの食パン食

 

パンが好きなんだよな。

パン屋に行くのも好きだし、毎朝今日はどうやって食パンを食べようって考えるのも好きだ。最近は最近のサンドイッチ - barzamkunの記事に影響されて、サンドイッチやらハンバーガーを作るのにもハマってる。予定の無い休日の昼間に自分で作ったハンバーガーとコーヒーを食べるって、面白い長編小説の始まりみたいで素敵じゃない?

んでんで、毎朝もちょっと素敵にしたくて、食パン料理本を借りてきたのだ。中々良かった。目下、晴れた朝に少し早く起きたら大体この本のチーズトーストを作っている。

①ピザ用チーズを油を引かずにフライパンで焼く

②チーズの端が焦げて、中心部が溶けてきたら上からパンを被せる

③チーズがパンにくっついたら出来上がり。

本当はもうちょっと、チーズ拘ったり・バター溶かしたりと丁寧な工程があるんだけど、面倒なのでやっていない。これでも十分美味しい。朝食の満足度が高いと、一日がちゃんとこれから18時間くらいあるんだ〜って張り切って臨む事が出来る。

原稿用紙10枚を書く力

原稿用紙10枚を書く力

 

綺麗な文章が書ける人が好きだ。整理された脳内が垣間見えるところが好きなんだと思う。行儀正しく並べられた色鉛筆のような清々しい美しさを感じる。

ということで、理想を追い求めて定期的に文章力本を読んでいるんだけど、ありすぎていまいちどれもピンと来ない。この本も、結局「メイントピックを3つぐらい作って書きまくれ!」が主旨だったんだけど…それは分かってるんだよな。多分自分には構成力が不足してて、小説でも雑記でも話の畳み方に悩むことが多い。上手い結末にするために、若干思ってたのと違うところに着地していることもある。うーん、報告書とかメール文の能力は割と磨き易いんだけど、単純な「読ませる文章」を書くって難しい。

ちなみに今のところ一番良かったのは「編集手帳」の文章術 (文春新書)

毎日新聞の編集後記(天声人語とかの欄)を書いていた人の文章術本なんだけど、ある程度国語力のある人が、何に気をつけると文章がシャンとするかってのが書いてある。短い文章で起承転結を作る、読ませる文を書くってことにもかなり言及している。新社会人とかに薦めたい。でも読書感想文とか小説向きの術本ではない。

逆に良かった文章術本があれば教えて下さい。

声が世界を抱きしめます  谷川俊太郎 詩・音楽・合唱を語る

声が世界を抱きしめます 谷川俊太郎 詩・音楽・合唱を語る

 

詩人・谷川俊太郎が、東京学芸大学での合唱講義や音楽関係者との対談/質疑応答を通して、詩や音楽や合唱について語った本。

僕は、詩がなくても生きていけるんですよ。でも音楽が無かったら生きていけない人間なんです。

前半の合唱講義では、実際に合唱曲になったいくつかを合唱と朗読を経て、合唱曲という朗読とも黙読とも異なった音楽への昇華を語る。音楽によって育まれた谷川俊太郎という人間性があり、その目に耳に響いた「美しさ」を読むことが出来る。一方で、作曲家や指揮者という「音楽が前提にある目線」から見た谷川俊太郎の詩についての話も面白い。

そう、歌は歌われることで、その分割された言葉を一つにする力があると思いますね

後半は対談形式でのインタビューだ。ここでは、詩と音楽、声、芸術としての詩、その中から谷川俊太郎の死生観や美意識を掬いとっていく。また、前半よりも踏み込んで「合唱のための詩」つまり大勢に歌われることを前提とした詩を作る際に考えてきたこと、などが書かれている。

 

美しいと感じた時に美しいものに身を任せること。言葉を尽くさず、既知の類似した何かに分類せず、感覚全体で受け止める…多元的認識をすること。美しさの前では、僕らはただただ無力であれば良いのだ。言葉を選んで扱う者の美意識に触れる事が出来る、中々興味深い本だった。

あの人に会いに 穂村弘対談集

あの人に会いに 穂村弘対談集

 

中々興味深い本だったので、別の対談本も読んだ。元々、穂村弘さんが好きで読んだら、谷川俊太郎さんとも対談していただけなんだけど。

色々な人との対談本なんだけど、殆ど自分の興味と被らない人ばかりだったので、飛ばし読み。でも佐藤雅彦(映像作家、だんご三兄弟作ったりピタゴラスイッチ監修したりの人) 氏との対談は凄くよかった。核心を表す言葉が無い時に、感覚を同じくする人達がその核心の周りについて語り、同意形成していくことで擬似的に「無形の核心が視える」ことがある。そういう対談になっている。それを第三者として体験できるというのは、天国的な良さがあるね。

佐藤雅彦氏が「いつもここから」の山田氏と世界の見え方を語ったという『やまだ眼』も読みたい。

 

  • 映画
この世界の片隅に

この世界の片隅に

 

評判が良かったので、Amazon primeにきた機会に観た。本当、評判通りの凄く良い映画だった。

広島の原爆投下を転として、その時代を生きたとある女性の日常が起承転結に纏められているのだが、その纏め方がすごく美しい。人というものが日常の積み重ねで出来ている存在であるということが丁寧に描かれている。歴史は悲劇ありきで語られるものだけど、本来の純然たる過去というのは、そこに積み重ねられている数多の個別の日常の中に、同一の悲劇が埋め込まれているだけのものなのだ。

この映画を観てから、原爆とかのwikiを読んだ。そういう影響も含めて、本当に良い映画だと思う。

オブリビオン (字幕版)

オブリビオン (字幕版)

 

これはダメ映画。荒廃した地球の映像は綺麗だし、SF乗り物もカッコいいんだけど、それだけだった。この映画の壮大さにしては話がシンプルで、そこは良かった。でもエンディングがクソ。ネタバレしますよ。

 

あのね〜愛した女がいる男性が、最終的に女性を遺して英雄的自死を選ぶってね〜ダサい。ダサいですよ。最期に満足そうな顔をする男に「ハァ〜!気持ちいいのまお前だけですよゥ」って思っちゃうんだよね。今回、女性も「自分も一緒に」って言うのに、それを無視して女性だけ安全圏に置いていくんだよ。そういう自己満足の感じと、そういう男ってやっぱ良いやん!?みたいな製作側の勝手な陶酔が好きじゃない。(余命数ヶ月の恋愛ものへの嫌悪感と同じ)

 

  • その他

ワイヤレスイヤホンを買った。先月から欲しいって言ってたでしょ。

音楽を聴くのが目的ではないので、音質の良し悪しはあまり分からない。洗濯物を干したり、料理をしながらラジオが聞けるのは良い。英語の勉強も出来る。お値段的には丁度いい。

個人的にカナル型は耳の圧迫感と密閉した時の耳の奥の声曇りが苦手なので、iPhoneに付属のタイプと同じやつにした。あと完全ワイヤレスは無くすので、右と左がくっついているやつにした。

左右マグネットがくっついた時に電源オフだと便利だったけど、まあ無くても別にいっかという感じ。

あと、寝ながらprime video見る時に首にコードが絡まないのも良い。

 

  • 欲しいもの

ふかふかの新しいバスタオルが買えなかったので、来月は頑張っていきたい。

あと、Twitterでも書いたけど、うちにはロゴ入りビールグラスとリリカルなのは一番くじグラスしかないので、バナナジュース用のかわいいグラスを買いたい。

 

  • 来月の目標

GWはパン作りがしたい。