ビッグフィッシュ

ビッグ・フィッシュ コレクターズ・エディション [DVD]
観ました。
初ティムバートンでした。
ネットでよく広告を見かけるので気になっていた。

1)全体の感想;狙いが見えすぎててどうにも好みじゃない
個人的には主人公が主人公すぎてご都合主義というか、話が完全にオチの為に作られている感じだとか、イイ話とか感動ってものを狙っているのが透けてみえてあまり馴染まなかった。フォレストガンプを観たときも思ったけども。

映画の時間(2時間くらい)が、オチの為にその前の時間があるというような形の映画はあまり楽しめない。最後であぁ良い終わり方してくるなぁ、という感慨はあるものの、技巧の感心で終わる。折角映画を観ているんだから人間味みたいなものを味わいたいのである。そもそも主人公が迷いも挫折もせず、誰からも恨まれないような素晴らしい人間です!という感動モノはなかなか感情移入ができない。

オチで泣くよりも、映画が終わっていくという事に自然と泣いてしまうような映画の方が好みなのだ。そういう意味ではロードムービーのようなものの方がすきなのかもしれない。

2)んでやっぱり小説じゃ出来ない表現ってとこに旨みを感じるわけで
ただ、要所々々では凄くぐっと来た。

妻が、病床の夫の手を掴んで、自分の顎に親指を当てさせて、丁度見上げてキスをさせるような手の形を作って、いとおしそうに彼の手を撫でるってシーン。
小説には出来ない、蓄積された時間(愛)ってものの表現だと思う。
こういうのは文章描写ではわざとしていてあまり胸に響かない。というのも、地の文で書いてしまうとそういった行動が「自然な行動」「無意識の行動」であることが中々表現しずらいからだ。(たとえ無意識に彼女は手をとった、と書いてもそこにある本来の”自然さ”は失われているだろう)意識して行動するのではなく、失恋をして自然と涙が零れた、のような感情に振り回された行動という描写はやはり映像でなくては難しい。更に、一見ただ手を取っているだけのように見えて、「よくこうやって愛しんでくれたのだ」という微かな表現がいい。勿論その後にその描写をきちんと気付かせるためのシーンもあるのだが、「観客が気付けば嬉しい伏線」みたいなもの(暗喩)が上手いとその隠された暗さの分だけ、人間の深みみたいなものがキャラクタに備わって見える。そういう演出は好きだ。

似た様なシーンでもう一つ。
葬式のシーン。
生前世話になった人たちが死者の為に集まるという何気ないシーンだが、まぁその人たちが集まったという事に対するネタバレ的な意味合いは置いておいて、一切悲しみを表現しないところが良かった。
沈鬱な重さだとかは感じさせず、死者と友人との繋がりだとか、ああこの人はきちんとこの世で生きていたのだなぁと感じさせる雰囲気が物凄く良い。特に音声はなく、ただ人々が笑ったり喋ったりしている様子を映しているだけなのだが、これが人の中で生きてきた一生というものなのだなぁと
オチがなければこの映画はダメだろうな、という映画ではあるがそう言わせるだけの深みを二時間で作り上げてはいるなという感じ。

食事だとか葬式だとかのシーンの、人が沢山いるのに会話や声がなくて、それぞれの縁だとか時間だとかってものがどこかの誰かや何かでクロスオーバーしていることをじんわりと感じさせてくるシーンが好きだ。
サマーウォーズの祖母の死に虚ろに悲しむ親戚達の横スクロールだとか
レインマンの兄弟で鬱陶しさを隠しつつご飯食べてるシーンだとか
そういう時間に裏づけされた何ともいえない感情が零れ落ちている表現が凄く好きだ。老夫婦の無言で慈しみ合うような目とかも素晴らしいと思う。

人に薦めるほど満足した映画ではなかったが(これはでも好みの問題だと思う)ストーリィ性のない部分部分がすごく良かった映画だった。
あ、でもビッグフィッシュって噂話に尾ひれをつけるって慣用句に準えてあるし上手いタイトルだなーと思いました。